風 と 木 の 詩 気持ち 悪い。 風と木の詩

20

7 二人が睦まじくいるためには 吉野弘 童話屋 吉野弘は、わかりやすくほのぼのした詩も書けば、 搾取される労働者の怒りを訴えるような激しい詩も書きます。 13 大岡信詩集 自選 大岡信 岩波書店 大岡信は、抒情的でイメージ豊かな詩を書く詩人です。 OVA [ ] 『 風と木の詩 SANCTUS -聖なるかな-』のタイトルで、により発売された(V118F8196)。

11

「はじめてからだを」 大岡信 舌にのせて異国のことばをはじめて発するときのやうに きみがはじめて美しいと自分のからだをみつめたとき 港湾ではひらいた鯵にいつもと同じ蠅がうなり 妹たちは父親への傾きのなかでまどろんでいた きみがはじめて美しいと自分のからだをみつめたとき きみの器官に五百年保たれてきた液は騒ぎ 千年むかしの原形質がきみの肉を虚空へひらく 子守唄さへおそろしい飛翔の予感 妹たちは父親への傾きのなかでまどろんでいる 地平には水かき棒を狭い苔のなかに通してゆるゆるまはし 満ち足りて低音でうたふ道化があらはれ ふさいでもきみの耳にはきこえてくるのだその唄が 「かなたの世界も満タン こなたの世界も満タン 満タンのタンクより満タンのタンクは生ず 満タンのタンクより満タンのタンクをお減きよ 剰るものやはり満タン 一切空の大千世界よ ぬんるぬる」 (あま) ああこんな子守唄さへおそろしい飛翔の予感 きみがはじめて美しいと自分のからだをみつめたとき きみはひとりの孤児になった 女になった きみはすべての器官でみつめた 花のひらくかすかな声を こひびとよ きみのからだはふるへながらかたどっていた 大いなる声によってとらへられた肉だけがもつ 花のかすかな声のかたちを 「人生論」 大岡信 おれは思はない、一篇の詩に 完成がありうるとは。 「祝福」 谷郁雄 百年前 あなたはいなかった 百年後 あなたはもういない 木が葉っぱを 茂らせたり 散らせたり するのと同じように あなたは 嘘をついたり 恋をしたり いろいろと忙しい 幸せとは ただそこにいること よろこびで 顔をしわくちゃにして 「来世」 谷郁雄 もしも 生まれ変れるなら もう一度 ぼくになる 君が ぼくの目の前を 通り過ぎたとき それが 君だと 思い出せるように 「片想い」 谷郁雄 勉強に 身が入らないのは あなたのせいです ため息ばかり 出るのも 眠れない夜が 続くのも 何もかも あなたのせいです とは あなたに 言えずに 隣の席で 居眠りしている あなたのことを 横目でにらむ 片想いの私 NO. それら 求めたこともなかった文字の組み合わせが いたずらっぽく あるいは 優しく 彼女の微かな疲労に そして思い出に そっと問いかける。

3

嬰児とは 遠い陣痛 人間らしい夢をそっくり かなぐり捨てた はかなく 弱々しげな母体の ひとつの呟きから 飛び降りた動物 泣きはじめた生物 ではなかったか? (手と足の指が 五本ずつあればよい) (不具でさえ なければよい) 反芻された多くの きらびやかな希望ののちに 母体は そのことだけを ひたむきに 祈ってはいなかったか? NO. しかもこんなんありかよって設定もその割によく考えると結構 BLあるあるだったりするんだけどもしかして「風木」が元ネタだったりするの? そうなの? ねえねえそうなの? ちなみに文庫版で読むと(私は知ってたからいいけど)第3巻のあとがきで氏が思いっきり が死ぬということをネタバレしてます。 「帰途」 田村隆一 言葉なんかおぼえるんじゃなかった 言葉のない世界 言葉が意味にならない世界に生きてたら どんなによかったか あなたが美しい言葉に復讐されても そいつは ぼくとは無関係だ きみが静かな意味に血を流したところで そいつも無関係だ あなたのやさしい眼のなかにある涙 きみの沈黙の舌からおちてくる痛苦 ぼくたちの世界にもし言葉がなかったら ぼくはただそれを眺めて立ち去るだろう あなたの涙に 果実の核ほどの意味があるか きみの一滴の血に この世界の夕暮れの ふるえるような夕焼けのひびきがあるか 言葉なんかおぼえるんじゃなかった 日本語とほんのすこしの外国語をおぼえたおかげで ぼくはあなたの涙のなかに立ちどまる ぼくはきみの血のなかにたったひとりで帰ってくる 「見えない木」 田村隆一 雪のうえに足跡があった 足跡を見て はじめてぼくは 小動物の 小鳥の 森のけものたちの 支配する世界を見た たとえば一匹のりすである その足跡は老いたにれの木からおりて 小径を横断し もみの林のなかに消えている 瞬時のためらいも 不安も 気のきいた疑問符も そこにはなかった また 一匹の狐である 彼の足跡は村の北側の谷づたいの道を 直線上にどこまでもつづいている ぼくの知っている飢餓は このような直線を描くことはけっしてなかった この足跡のような弾力的な 盲目的な 肯定的なリズムは ぼくの心にはなかった たとえば一羽の小鳥である その声よりも透明な足跡 その生よりもするどい爪の跡 雪の斜面にきざまれた彼女の羽 ぼくの知っている恐怖は このような単一な模様を描くことはけっしてなかった この羽跡のような 肉感的な 異端的な 肯定的なリズムは ぼくの心にはなかったものだ 突然 浅間山の頂点に大きな日没がくる なにものかが森をつくり 谷の口をおしひろげ 寒冷な空気をひき裂く ぼくは小屋にかえる ぼくはストーブをたく ぼくは 見えない木 見えない鳥 見えない小動物 ぼくは 見えないリズムのことばかり考える NO. 8 現代の詩人6 清岡 卓行 中央公論社 清岡 卓行は、イメージ豊かな抒情詩を書く詩人です。 登場人物 [ ] ジルベール・コクトー 主人公。

5

14 吉岡実 戦後名詩選 思潮社 おすすめの詩人から、戦後を代表する詩人の吉岡実をはずすことはできません。 ある老碩学 清岡 卓行 美酒を酌み 懐かしのユマニストは答えた。

9 続・鮎川 信夫詩集 鮎川 信夫 思潮社 鮎川 信夫の詩は、難しい詩が多いというイメージで、嫌いでした。 なぜ、ぼくを殴るんだ? 悪いのはそっちだろ 結局部屋も決められずにただ疲れて、気持ちが荒れて、だからこそ気休めにレストランへ行こうって・・・ なんでそれが悪いのさ? たとえ高くたって、こんな気まずい嫌な時間をすごすよりずっといい そう言われて、セルジュは我に返ります。 氷を詰めた 切子ガラスに、透明な焼酎を滴らし、 目の高さにかかげて、 日の光を称え、すこしずつ 溶けてゆく氷の音に耳を澄ます。

5

人の一日に必要なもの 長田弘 どうしても思いだせない 確かにわかっていて、はっきりと 感じられていて、思いだせない。

誰が 手をのばして 彼女の髪の毛を吹きぬける ゆるやかな風の背中に 透かし彫りのように書き込んだのか。

13

ありふれた奇跡 清岡 卓行 嬰児には 思いがけない一瞬 完璧な美貌がある と 日光が満ち溢れてくる午前のひととき 彼女の憩いに ふとひらめく宝石のような言葉。

7

。 。 。

18

。 。 。

7