風 立ち ぬ。 風立ちぬ (2013年の映画)

— 会澤 重倶 bakasazu 次郎は東京の大学で設計士を目指し勉学に励んでいました。 「私なんかのことばかり考えていないで……」 「いや、お前のことをもっともっと考えたいんだ……」私はそのとき 咄嗟 ( とっさ )に頭に浮んで来た或る小説の漠としたイデエをすぐその場で追い廻し出しながら、独り言のように言い続けた。 そして、そういう時間から抜け出したような日々にあっては、私達の日常生活のどんな 些細 ( ささい )なものまで、その一つ一つがいままでとは全然異った魅力を持ち出すのだ。

…… 「節子さんはお起きになっているのかしら?」しばらくしてから私は何気なさそうに 訊 ( き )いてみた。 その上空を渡り鳥の群れらしいのが音もなくすうっと横切って行く、その並み重った山々を眺めながら、私達はそんな最初の日々のような慕わしい気持で、肩を押しつけ合ったまま、 佇 ( たたず )んでいた。 さらに「 父は必ずしも零戦は好きではなかった」 と指摘し「 宮崎監督がすごいのは『九試』完成までで、零戦を描いていないこと」 だと評している。

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そうしてその婦人がさっきからずっと 跪 ( ひざま )ずき続けているらしいのに気がつくと、私は急にその会堂のなかのいかにも寒々としているのを身にしみて感じた。 「去年はずっと冬じゅう開いて居りましたが、今年は神父様が松本の方へお 出 ( いで )になりますので……」 「そんな冬でもこの村に信者はあるんですか?」と私は 無躾 ( ぶしつ )けに訊いた。 でも、みんなが「『Look At Me』『Look At Me』」と絶叫するので、私が冷静に「『Romance』です」と答えて正解したという。

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風立ちぬ 訳題 The Wind Has Risen 作者 国 言語 ジャンル 、 発表形態 雑誌掲載 初出情報 初出 「 風立ちぬ」(のち「 序曲」「 風立ちぬ」)-『』12月号(第18巻第12号) 「 冬」-『』1月号(第15巻第1号) 「 婚約」(のち「 春」)-『』1937年4月号(第1巻第4号) 「 死のかげの谷」-『』3月号(第35巻第3号) 刊本情報 刊行 『風立ちぬ』 収録 「 風立ちぬ」「 冬」- 『風立ちぬ』 1937年6月 『 風立ちぬ』(かぜたちぬ)は、の。

その裾野の傾斜は更に延びて行って、二三の小さな山村を村全体傾かせながら、最後に無数の黒い松にすっかり包まれながら、見えない 谿間 ( たにま )のなかに尽きていた。 そしてそんな会話の間に父に示す彼女の表情や抑揚のうちに、何か非常に少女らしい輝きが 蘇 ( よみがえ )るのを私は認めた。

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が、それから口をすこし歪めるように笑いながら、 「私のことならどうでもお好きなようにお書きなさいな」と私を軽く 遇 ( あしら )うように言い足した。 ……でも、それから 漸 ( や )っとあなたのいつか 仰 ( おっ )しゃったお言葉を考え出したら、すこうし気が落着いて来たの。 彼女の枕元で新聞を拡げていた私は、人間に大きな衝動を与える出来事なんぞと云うものは 却 ( かえ )ってそれが過ぎ去った跡は何んだかまるで 他所 ( よそ )の事のように見えるものだなあと思いながら、そういう彼女の方をちらりと見やって、思わず 揶揄 ( やゆ )するような調子で言った。

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